ファッション

【着崩れ防止の秘訣】着物が美しく見える所作やマナーとは?着物でトイレはどうする?外出先で気をつけるべきポイント

着物でのお出かけは、気持ちが浮き立つのと同時に普段より背筋がシャンと伸びる気がします。
しかし、着付けをした直後はきちんと伸びていた背筋も、慣れてくると同時に普段の姿勢や動作の癖が出てしまいがちです

今回は、特別な着物姿をより美しく見せるための所作について紹介します。
外出先で困らないための着崩れ防止ポイントや食事の際に気を付けるマナーについても解説しますので、着物でのお出かけを控えた方はぜひ参考にしてみてください。

美しい所作が着物姿の決め手!

着物姿が美しく見えるポイントはなんだと思いますか?
着付け?確かに要点をおさえた着付けも重要ですが、着ている人の身のこなしで着姿をより綺麗に見せることができます。
美しい立ち居振る舞いが着物姿の決め手と言えるでしょう。

着物で出かける際には、普段より美しく丁寧な所作を意識することが大切です。

所作しょさとは?

着物での立ち居振る舞いで使われる「所作しょさ」とは、どんな意味をさすのでしょうか。また「動作」とのちがいはなんでしょう?

「動作」は、人の動き全般に用いられる言葉です。
一方で「所作しょさ」は、立ち居振る舞いや身のこなしなど、人の目を意識した身体の動かし方を意味します。茶道の基本動作も「所作しょさ」と表現されるように、ある程度動きに決まりのある動作にも使われます。

着物を着ている時は無意識に行動するのではなく、美しい動きを意識した身のこなしを心がけたいですね。

着物での所作について

着物姿での「美しい所作しょさ」とは、どのような動きをさすのでしょうか。
普段の動作の中にもちょっとしたポイントを意識することで、着物での動きが各段に美しくなります。

立ち方

待ち合わせの時、信号待ちの時など、着物で立っている人の姿は人目を惹くものです。
着物での立ち姿が美しく見えるよう、以下の点に気をつけましょう。

まずは背筋が一直線になるように意識すること。お腹に力を入れて後ろに引くようにすると、自然と背筋が伸びます。肩の力は抜いてなるべく肩を下げるようにすると首がすらりと長く見えます、顎は引き気味ですが現代ではスマホ首と呼ばれる首が前に出てしまう癖のある方も多いです、後頭部が背筋とつながっている・耳が後ろになるような意識で引き気味にすると姿勢良く見えます、腕は脇を軽くしめて、伸ばし切らずにおへその下あたりで両手を重ねると上品です。

左右の足はピッタリくっつけることを意識しましょう。

歩き方

着物でのお出かけでもっとも気を付けたいポイントが歩き方です。
洋服と和装とでは歩き方がまったく異なることを頭においておきましょう。

着物では小さな歩幅で歩くのが基本となります。
両足のひざ頭をつけ、小さめの歩幅でやや内股で歩くように心がけましょう。
裾がバサバサとひるがえったり、草履がパタパタなるように歩くと美しく見えません。足指に力を入れ草履をつかむように、かかとからでなく平行に着地するよう心がけましょう。

急ぎ足ではなく、草履一足分の歩幅を目安にゆったりと優雅に歩くのがおすすめです。

階段の上り方、下り方

階段の上り下りも、普段通りにしてしまうと着姿が崩れてしまうので注意が必要です。

上りでは、右手で上前と下前を5㎝ほどつまんで少し持ち上げ、足のつま先で上るように意識します。降りるときも同じく上前と下前をつまみ、つま先からゆっくりと降ります。
歩く時と同じく歩幅が大きくならないよう、細かい動きを心がけましょう。

荷物がある場合は左手に預け、右手で上前を軽く上げ斜め右を向くと裾を踏みません。振袖の時は両袖を荷物を持った左手に掛けましょう。

正座の仕方

着物では、お茶会や和食の席など正座をするシーンも多いものです。

座る前には左手で上前の太ももあたりを軽くおさえ、右手で上前をなでながら膝をつくと着物の下半身が整います、座るときも背筋を伸ばすように!
正座したら背筋をまっすぐに伸ばして、顎を少し引き気味にしましょう。
足の親指は左右どちらを上にしても構いません。両方のかかとの間を広くあけ、その間に腰をのせるようにすると重心が定まります。

立ち姿と同じく、姿勢を正すことが美しく見せるポイントです。

おじぎの仕方

着物姿でのお辞儀は、いつも以上にゆっくりと丁寧な動作を心がけましょう。

正座でお辞儀をする際には、手を膝前で「ハ」の字に置き、頭から腰までを一直線に保ちながら身体を前に傾けます。丁寧に肘を曲げながら身体を動かすと綺麗です。

立ってお辞儀をする場面では、正座の時と同様に背筋、首筋をまっすぐにして、両足をきちんとそろえて立ちます。手を身体の前で合わせ、お腹に力を入れながらお辞儀をします。
お尻が突き出てしまわないよう、下腹に力を入れて身体を前に倒すのがコツです。

椅子の座り方

パーティーや食事会で椅子に座る時も、美しい姿を保つように心がけましょう。

椅子に腰掛ける際には右手で上前を少し引き、左手で太もものあたりを前から後ろになでて膝裏ひざうらのたるみを取ります。座った後も膝の後ろに変にしわがよっていないか確認しましょう。
座る姿勢は帯がつぶれてしまわないよう、お腹に力を入れて浅めに腰掛けるのがポイントです。

また、椅子に座った姿勢で写真を撮る際には、画像のように身体を少し斜めにすると着姿がすらりと見えます。奥側の足を半歩後ろに下げるのもポイントです。

車の乗り方

車の乗り降りも着物の時は慎重に。袖や裾を車で汚してしまうケースは意外に多いのです。

車に乗るときは車体に背を向け、右手で上前を少し引き上げます。座席に腰をおろし、頭を車内に入れてから両足を浮かせて身体を回して車に入りましょう。くれぐれも着物の裾が車のボディにつかないよう注意します。
車に乗っている最中も、できれば浅く座って帯がつぶれてしまわないように注意しましょう。裾がはだけやすいのでクリップで留めておくのもおすすめです。

電車でつり革を持つ場合は、反対の手で袖口をつまんで両脇を締めておくのが良いでしょう

バッグの持ち方

和装でバッグを持つ際には、荷物をなるべく自分の身体にぴったりと添わせるようにすると上品です。

脇をしめて身体の側面からバッグを持つ手が動かないように気を付けます。
バッグが前後に揺れると粗雑な印象になるので、手を振らないように注意しましょう。
また、バッグはなるべく小さめのサイズを選ぶことで美しい佇まいが叶います。

【豆知識】目指せ着姿美人!力を入れるところ・抜くところ

着物姿を美しく見せるには、姿勢を良くすることが基本であることがわかりました。
良い姿勢をキープするには、力の入れどころと抜きどころを知っておくことが大切です。

次に、着姿美人が気をつけている2つのポイントを紹介します。

お腹に力を入れると姿勢が良くなる

着物姿が映える姿勢を作るには、お腹に力を入れるのがおすすめです。
臍下丹田せいかたんでんと呼ばれる下腹部分にぐっと力を入れておくと、背筋が伸びた美しい姿勢を保ちやすくなります。

反対に、お腹に力を入れないと下腹が出て重心が後ろに傾くため着姿が崩れてしまいがちに。
少し前かがみなくらいの方が、立ち姿が綺麗に見えます。

肩の力は抜いてなで肩に

着物はなで肩の方が似合う、と聞いたことはありませんか?
なだらかに下がった肩は着物姿をよりはんなりと可憐に見せてくれます。

肩に力が入ると肩が上がって首も短く見えてしまいます。
着物を着る際にはゆったりと肩の力を落としましょう。
着付けを始める前にストレッチするのもおすすめ。肩をぐるりと後ろに回し、耳の下あたりですとんとおろした位置で肩をキープすると、美しい姿勢が保てます。

着崩れ防止に!外出先で気をつけるポイント

基本的な所作や良い姿勢の作り方をおさえたところで、着物での外出時に気を付けるべきポイントを紹介します。美しい所作はもちろん、外出先でもなるべく着付けしたての綺麗な状態を保ちたいですよね。

お出かけ中の着崩れ防止には欠かせない注意点ですので、ぜひ覚えておきましょう。

大股歩きはNG

大股歩きは美しくないだけでなく、着物の下半身が着崩れる大きな原因になります。
着物で歩く時には、とにかく歩幅小さめのちょこちょことした動きを心がけましょう。

足を広げないよう気をつけて歩くことで、着付けた時の裾すぼまりの美しい下半身周りがキープできます。少し内股気味にのんびり歩くこともお忘れなく。
ゆっくり歩いても約束に遅れることがないよう、洋服時よりも若干早めに家を出るのがおすすめです。

ここに注意

下半身の着付けが崩れて上前が落ちてきてしまったら、帯の下にある腰紐のあたりを上に持ち上げてみましょう。応急処置的に身丈を調整することができます。

脇を広げない

足だけでなく、脇も広げないことが美しい着姿を保つ重要なポイントです。

着物で高いところの物を持ったり大きく手を降ったりすると、脇の身八つ口みやつくち付近から生地が出てしまいだらしない印象に。現代では自撮りなどで手を伸ばす際にも注意が必要です。
脇は常にしめるように意識し、大きな動作はなるべくしないよう慎みましょう。
外出の際に自撮り棒を用意すると、着崩れることなく自撮りを楽しむことができます。

ここに注意

脇部分から着物が出てきてしまったら、帯の中に隠すようにして入れ込めばOK。ただし一度出てきた生地はまた出てくることも多いため、常に気にしておきましょう。

壁や背もたれによりかからない

着物の帯が崩れてしまうトラブルは外出につきもの。後ろにある帯は自分では直しにくいため、大きく崩れないように未然に防止することが大切です。

帯の形をキープするためには、壁や背もたれによりかからないことが重要です。
特に食事の席や車内などでは要注意。ついゆったりと背もたれに背中をつけたくなりますが、背中に帯があることを意識し浅く腰掛けるようにしましょう。

また、壁や背もたれとの摩擦まさつは帯が痛む原因にもなります。土壁に帯がこすれて毛羽立ってしまった例もあるので、着崩れ防止と品質保持のためにも「背中はどこにもつけない!」という強い意思を持って外出しましょう。

ここに注意

もし壁にぶつかって帯が傾いてしまった際などは、早めにトイレなど鏡がある場所に移動し、鏡を見ながらお太鼓の下部分をしっかりと持ってまっすぐに直しましょう。大きく崩れてしまった際には、潔く一から結びなおすのがおすすめです

着物での食事マナー

食事会やパーティー、同窓会に結婚式など、着物を着る場面では食事がつきものです。
着物での食事で気をつけるべきマナーはあるのでしょうか?

洋服とちがい動きが制限される着物ならではのポイントを紹介します

ナプキンを使う

洋服でも服やテーブルを汚さないように食べるのは当然のマナーですが、特に着物では食べこぼしに気を付けたいものです。

通常は膝に置くナプキンですが、着物の際は帯の間にはさむのがおすすめです。
万が一の時に帯から下の着物が汚れるのを防いでくれます。

心配な方は写真のように着物の衿部分にナプキンをはさむのが良いでしょう。

ここに注意

ただし、正式な場では避けた方が無難。親しい間柄の食事の席では問題ないでしょう。

袖のたもとに気を配る

洋服とちがい、着物では袖のたもとを意識した身のこなしが重要です。

パーティーなどで席から立ち上がり、勢いよく後ろを振り返った拍子に
「たもとでグラスをひっくり返してしまった」
「お皿にたもとをつけてしまった」
などはよく耳にする失敗談です。

ここに注意

自分が思っているより袖のたもとは長いので配慮が必要。ゆっくりと落ち着いた動きを心がけることで、食事中のハプニングは起こりにくくなるでしょう。

物の取り方

例えば食事会などでテーブルのお醤油を取る時など、物を取る動作にも美しく見せるポイントがあります。

着物では、袖口から腕がむきだしになってしまうとあまり美しくありません。
遠くの物を取る際には、袂や袖口を反対の手で押さえるようにすると優雅に見えます。できれば手を伸ばし切らずに、軽く曲げる位置でとどめておきましょう。
それ以上遠くにある物は無理して取ろうとせず、同伴者やお店の人にお願いして受け渡してもらうのがおすすめです。

お手洗いに行くとき

着物でお手洗いへ行くことを不安に感じる方も多いでしょう。着慣れていない方はあらかじめ着物をとめる専用のクリップを用意しておくと安心です、サイズが特大・大・小の3種類あります、大か小で十分です。(大サイズは長さ7cm×幅2cm程度・小サイズは長さ5cm×幅1cm)専用のクリップがないときは洗濯ばさみで代用できますがはさむ力が強いものだと傷めてしまうこともあるので注意しましょう。

  1. 袖の下の部分を帯にクリップでとめます。
  2. 着物の上前の裾を持ちあげてから下前の裾を持ちあげ、後も一緒に上へめくっていきます。
  3. 上前、下前の裾をクリップで帯にとめます。
  4. 着物の次に長襦袢、肌襦袢を同様にとめましょう。
  5. 下着をおろして用を足します。

クリップがない場合は以下のようにしてみましょう

きものの右裾を右手で

左裾を左手でつまみます

長襦袢の裾も同様につまみます。

裾よけも持ちましょう。

袖も帯もすべて持ち上げた裾でくるむように

上までガバッと持ち上げます。

写真の一番外側が裾よけです

前である程度まとめて、片手でつかみます

クリップや紐があれば留めてもOK

戻すときは手を離し1枚ずつ重なりを直します

引用:はじめてさんからベテランさんまで使える 楽しくなる着付け 100のコツ

お太鼓・裾の後ろ側・おはしょりが上がってないかなど最後に確認をするのを忘れずに!

まとめ

今回は、着物姿がより美しく見える所作や外出先での着崩れ防止のポイント、食事の際のマナーなどを解説しました。

あまり着慣れない着物での身のこなしは注意が必要ですが、一度着るごとにふさわしい所作が身についていきます。いつも以上に丁寧な動きを心がけることで、各段に着姿が美しくなりますよ。

まずは記事のポイントをおさえて、着物での外出にチャレンジしてみましょう!

-ファッション